血管ファントム(模擬血管)の医療現場での用途や機能、設計の重要性とについて分かりやすく解説

血管ファントム 循環シミュレータ

血管ファントム(模擬血管)の機能

血管ファントムとは、人体の血管を再現した模型のことです。血管の構造や大きさが再現されており、用途に応じてシリコンやポリビニルアルコールなどの材料が用いられます。これらの材料を用いることで、形状だけでなく、弾力感や摩擦特性なども本物に近づけられます。

目的や用途にあわせて、どういった機能や構造が必要となるのかを考慮し、それに応じて材料などを検討するとよいでしょう。例として、血管ファントムが医療現場でどのように利用されているのか、その目的や求められる機能をご説明します。

医療現場での利用とその目的

血管ファントムは、手術の練習や医療機器の実験・測定・評価などに使用されています。手術手技を習得するためには練習が必要ですが、ヒトの身体を使ってトレーニングはできません。なぜなら、誤った操作をした場合、医療事故につながる恐れがあるからです。

体内での構造や弾力感などを再現したファントムであれば、医療事故のリスクもなく、スキルを高められるでしょう。また、血管ファントムは臨床研究や開発に用いられることもあります。たとえば、健常な血管と病変のある血管モデルを用いることで、血管造影検査(ANGIO)においてパターンを測定・比較・評価を行うことができます。

血管ファントム 血液循環シミュレータ

医療の研究・開発においては動物実験を行うことがありますが、再現性の高い血管ファントムの開発は、動物実験の減少につながることもあります。安久工機では人工心臓開発に携わり、血液循環環境を再現した「血液循環シミュレータ」を開発しました。これを用いることで、定量的評価が向上し、動物実験への依存を減らすことができました。このように、血管ファントムの開発は、ときとして今後の医療の発展や進歩に大きな影響を与えるのです。

もし医療研究・開発者や医療関係者の方で、
現在使用している血管ファントムを改良したい
研究・開発のために専用の血管ファントムを製作したい
などをお考えでしたら、ぜひ安久工機へご相談ください。

要件等を伺った上で、目的・用途に合った血管ファントムを設計・製作いたします。

血管ファントムの基本的な構造

血管ファントムの血管部分のモデルの基本的な構造は、生体内の血管と同じです。生体内の血管と同じと聞くと複雑なモデルを想像するかもしれませんが、すべてを再現するわけではありません。使用目的に応じて、必要な部分だけを再現するのが一般的です。

ただ、血管部分だけでは目的が達成できないこともあるため、周囲の組織を再現したり、装置を取り付けたりすることもあります。そういった場合、どのような仕様・構造になるのか、ここからは目的に応じた仕様・構造の例をご説明します。

目的によって仕様・構造は異なる

血管ファントムは、医療研究から教育の場まで幅広い用途で使用されているため、その仕様・構造は目的によって異なります。たとえば、注射のトレーニングを目的とした血管ファントムの場合は、血管だけでなく皮膚の弾力や質感も再現することで、より本番に近い環境でトレーニングをすることができます。

一方で、測定・評価・シミュレーションを目的とする血管ファントムの場合は、血液の流れを再現するためのポンプや装置が必要となります。このように、目的や用途によって仕様や構造を考慮する必要がありますので、ご依頼前に目的や用途は明確にしておくとよいでしょう。

血管ファントムの設計の重要性

血管ファントムの設計において重要となるのは、回路設計です。血管ファントムはさまざまな用途で使用されるため、単純な模型であればこういった回路設計が必要ない場合もあります。ただし、先ほど例に挙げた測定・評価・シミュレーションなどができる血管ファントムであれば、回路設計は必要となります。

もし、そういった血管ファントムを製作する場合は、回路設計の得意な設計・製作会社にご依頼されることをおすすめします。なぜなら、回路を組むときに流体の吐出方向、流量、速度などを調整できるからです。

回路は配置が異なるだけでその特性が変わってくるため、専門的な知識を要します。
安久工機は回路設計を得意としており、これまでに多くの医療機器の開発に携わってきました。設計においては、「こんな機能がつけられないか」「こういう調整ができないか」といった細かな要望を伺いながら設計します。

血管ファントムの構想設計~製作に対応

試作・開発には思っている以上の時間がかかります。設計や必要な加工ごとに異なる会社に依頼するだけでも、会社を探す手間、打ち合わせなど多くの時間を要するからです。

安久工機では構想設計〜製作に対応しております。具体的には、構想設計・基本設計・詳細設計・加工・調達・組立調整・評価まで一貫対応しているため、各工程においてそれぞれ対応している会社に依頼する手間はかかりません。

ただ、任せっぱなしで大丈夫なのか不安になる方もいらっしゃると思います。安久工機は、お客様と綿密な打ち合わせを行い、進捗は都度ご報告するなど細やかなやり取りを心がけておりますので、どうぞご安心ください。

血管ファントムの応用例

血管ファントムは幅広く応用されています。ここまでその機能や構造について説明する中で、トレーニングや研究での使用についてご紹介しましたが、ここからは、血管ファントムが具体的にどのように応用されるのかをご紹介します。

応用例を知ることで、製品の改良すべき点が明らかになり、新たな製品の仕様設計につながることもあるでしょう。製品の改良や開発・研究にお悩みの医療関係者や医療機器メーカーの方は、ご参考にされてください。

臨床研究での応用

近年では、高度な診療を行うために3次元画像を用いられることが多くなっています。たとえばCT検査では、短時間で広範囲の検査を行うことができ、血液の流れなどからさまざまな情報が得られます。

このような情報の解析や検証、また臨床研究には、血管ファントムが活用されています。血管ファントムを使用することで、CT検査の臨床研究において以下のような検証や評価などを行うことができます。

  • 造影効果の検証
  • 血管内腔の評価
  • 流速・流量の測定

今回はCT検査の臨床研究における応用をご紹介しましたが、これは一例に過ぎません。臨床研究や検証の内容によって、血管ファントムが必要な場合に用いられます。

医療教育での応用

血管ファントムは手術の練習にも使用されています。具体的な応用例として、冠動脈のバイパス手術の練習に使用されるモデルをご紹介します。

バイパス手術は、狭くなった冠動脈の先に新しい血管を繋ぐことで、血液の流れを正常化させる治療法です。血管同士を縫合する必要があるため、難易度が高い手術といえます。

この技術の習得のために、ヒトの代わりに血管ファントムが使用されます。こういったトレーニングに用いられる血管ファントムは、血管周囲の組織の質感も再現されており、より本番に近い環境で練習をすることができます

こういった実技的な練習だけでなく、血管の構造を学ぶためにも血管ファントムが使用されるケースがあります。立体的で精巧に再現された血管ファントムは、平面図よりも理解しやすいからです。

血管ファントムに関するよくある質問

血管ファントムを開発する上で、よく質問が寄せられます。ここでは、どういった質問があるのかをご紹介いたします。

Q. 相談や見積に費用は発生しますか?
A. 初期の相談料やお見積りの費用は頂いておりません。

Q. 硬度や透明化などの調整は可能ですか?
A. 可能です。材料の配合や製法の調整でさまざまな硬度や透明度の再現が可能です。

医療の進歩に繋がる血管ファントムの設計・製作についてはこちら

血管ファントムの設計・製作をお考えでしたら、医工学における専門的な知識が豊富な安久工機へご相談ください。設計を行う会社はたくさんありますが、弊社は人工心臓開発に携わった経験があり、特にポンプの設計・製作において高い評価を得ております。

弊社HPには事例を掲載しております。そちらをご覧いただくと、技術や取り組みについてより詳しくご理解いただけるかと思います。
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